記事2026-08-23
葬儀の「平均○○万円」に火葬料は入っていない — そして火葬料は、どこで焼くかで十数倍違う
葬儀費用の「平均」としてよく出てくる数字は公的統計ではなく、民間調査の公表平均です。その平均には火葬料もお布施・戒名料も含まれていません。火葬料が自治体と施設でどれだけ違うかを、公表料金の実例だけで整理しました。
この記事は 葬儀見積チェッカー(葬儀の見積を、決める前に確認)を作る過程で、 一次資料を読んだ記録です。事業者への送客はしていません。
葬儀の見積を渡されて、その場で妥当かどうかを判断するのは、たぶんいちばん難しい部類に入る。時間が無く、比べる相手も分からない。
検索すると「平均○○万円」という数字は出てくる。ただ、見積を突き合わせる仕組みを作るために出どころを追ったところ、この数字の扱いには最初から2つ注意がいることが分かった。
- 葬儀費用に公的な相場統計は存在しない。 国が公表している葬儀費用の統計を確認できなかった(2026年8月時点の調査範囲)。よく引かれる数字は、民間企業が自社で行った調査の公表値になる。
- その平均には、火葬料も、お布施・戒名料も含まれていない。
そして火葬料は、どこで焼くかで十数倍変わる。この記事は、その2つを公表資料の記載だけで整理したものになる。
1. 「平均」の出どころと、調査の設計
いちばん広く引かれているのは、株式会社鎌倉新書の「お葬式に関する全国調査」になる。第7回が2026年5月12日に公表されている。調査の設計は、公表資料にこう書かれている。
- 調査期間:2026年2月27日〜3月3日
- 対象:直近2年以内(2024年3月〜2026年3月)に喪主経験のある全国40歳以上の男女
- 有効回答:2,000件
公表されている形式別の総額の平均は次のとおり。
| 葬儀の形式 | 総額の平均 |
|---|---|
| 直葬・火葬式 | 495,600円 |
| 一日葬 | 744,300円 |
| 家族葬 | 963,900円 |
| 一般葬 | 1,220,100円 |
| 全体 | 967,300円 |
内訳の全体平均も公表されている。
| 費目 | 全体平均 |
|---|---|
| 基本料金 | 720,200円 |
| 飲食費 | 116,700円 |
| 返礼品費 | 130,300円 |
この数字を自分の見積と比べるときに、押さえておくことが3つある。
① 公表されているのは「平均」であって、レンジではない。 上下の幅は公表されていない。地域・会場・参列人数で大きく変わる費目なので、平均から離れていること自体は、それだけでは何も意味しない。
② 民間調査であって、公的統計ではない。 調査主体は葬儀の情報サービスを提供する事業者になる。設計と回答数が公表されているぶん追跡はできるが、「公的な相場」として引くことはできない。
③ 火葬料と、お布施・戒名料が含まれていない。 公表資料自身が明記している。ここが次の話になる。
2. 火葬料は、どこで焼くかで桁が変わる
火葬料の公表額を、照会できた3施設で並べるとこうなる。
| 施設 | 住民等の料金 | 住民以外の料金 | 時点 |
|---|---|---|---|
| 名古屋市立斎場(大人) | 5,000円 | 70,000円 | 2025年10月16日時点の公表額 |
| 臨海斎場(12歳以上) | 44,000円 | 88,000円 | 令和5年4月1日改定 |
| 東京博善(民間・普通炉) | — | 87,000円 | 2026年4月1日火葬分より(改定前90,000円) |
臨海斎場は、港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区が設けた一部事務組合が運営していて、「住民等の料金」はその組織区の住民に適用される額になる。東京博善は民間の事業者で、広済堂ホールディングスのプレスリリースで2026年4月1日火葬分より普通炉87,000円(改定前90,000円)と公表されている。
同じ「火葬料」という名前の行が、5,000円のこともあれば87,000円のこともある。 名古屋市立斎場だけを見ても、市民5,000円と市外70,000円で14倍になる。
読み取れるのは、額を左右しているのが2つの軸だということになる。
- 公営か民間か
- その自治体の住民か、住民でないか
だから「火葬料が高い」という言い方は、この2つを確定させないと成り立たない。 見積書の火葬料の行を見るときに確認できるのは、金額そのものより先に、どの斎場を使う前提の見積なのかと、故人・喪主がその自治体の住民にあたるのかになる。
この表の限界
3施設は、たまたま公表額を照会できたものになる。全国を網羅した統計ではない。 火葬料が無料の自治体もあれば、44,000円を超える施設もある。上の表から言えるのは「自治体と施設によってこれだけ開きがある」までで、「公営なら5,000円」ではない。
住んでいる市区町村の火葬場の料金は、たいてい自治体のウェブサイトに使用料として載っている。手元の見積の火葬料は、そこと突き合わせられる。
3. 見積に「入っていないもの」を先に確認する
火葬料と同じく、平均にも見積にも入っていないことがあるのが、宗教者へのお布施・戒名料になる。葬儀社の見積に含まれないのが通常で、鎌倉新書の調査の総額にも含まれていない。
つまり、手元の見積の合計額が調査の平均より低くても、火葬料とお布施・戒名料を足すと超えることがある。逆に、見積に火葬料が含まれている場合、平均と単純に比べると高く見える。同じ土俵に乗っていない数字を比べているという状態が起きやすい。
見積を受け取ったときに最初に確認できるのは、金額の水準ではなく、この見積は何を含み、何を含んでいないかのほうになる。
4. 単価×人数の項目は、単価では詰められない
飲食費と返礼品費は、参列人数で動く。ここについて、1人あたりの単価の公表値を確認できなかった。鎌倉新書の調査が公表しているのは総額の平均だけ(飲食費11.67万円・返礼品費13.03万円)で、人数が公表されていないため、そこから単価を割り出すこともできない。
だからこの記事は、飲食・返礼品の単価が高いか安いかを一切書かない。書けるのは、見積の書き方のほうになる。
- 単価と人数が分かれて書かれているか。 「通夜振る舞い 一式」では、人数が変わったときに何が変わるのかが分からない。
- 人数が減った場合の精算方法が書かれているか。 葬儀の参列人数は、当日まで確定しないことが多い。
- 返礼品の数量根拠と、余った場合の扱い。 持ち込みができるかどうかも含めて。
安置についても同じで、1日あたりの延長料・ドライアイス追加費用の公表値を確認できなかった。目安は書けないので、確認できるのは「安置日数が長くなる場合に、延長料とドライアイス追加があるのか、あるならいくらか」が書かれているかまでになる。
5. 留保
3つある。
1. この記事の総額の数字は、公的統計ではない。 出どころは民間の1調査で、有効回答2,000件・直近2年以内の喪主経験者が対象になる。調査の設計が公表されているので追跡はできるが、公的な裏付けを持つ数字ではない。
2. 平均は点推定であって、幅ではない。 平均より高い見積が不当という意味には、まったくならない。
3. 火葬料の3施設は例示になる。 全国の分布を示すものではない。自分の地域の額は、その自治体・施設の公表料金を見るのが早い。
見積を受け取ったら見る5点
- 火葬料は、この見積に含まれているか。 含まれていないなら、どこの斎場でいくらかを別に確認する。含まれているなら、その斎場の公表料金と突き合わせられる。
- 使う斎場は公営か民間か。住民料金が適用される条件を満たすか。 名古屋市立斎場のように、市民と市外で十数倍違う施設がある。
- お布施・戒名料は別か。 葬儀社の見積に含まれないのが通常になる。
- 単価×人数の項目は、単価と人数が分かれているか。 そして人数が変わったときの精算方法。
- 安置日数が延びた場合の追加費用が書かれているか。 延長料とドライアイスの追加。
比べる相手が無い場面では、「この見積の合計は何を含んでいて、何を含んでいませんか」が、いちばん答えの返ってきやすい質問だと思う。
出典(すべて 2026-08-23 に本文を取得して確認)
- 株式会社鎌倉新書「【第7回】お葬式に関する全国調査(2026年)」(2026年5月12日公表・有効回答2,000件)https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000129.000009951.htmlhttps://www.kamakura-net.co.jp/newstopics/12326/
- 名古屋市「市立斎場の使用料金」https://www.city.nagoya.jp/kurashi/shisetsu/1016323/1016324/1016325.html
- 臨海斎場「使用料」(港区・品川区・目黒区・大田区・世田谷区の一部事務組合/令和5年4月1日改定)https://www.rinkaisaijo.or.jp/guide/price/
- 株式会社広済堂ホールディングス プレスリリース「【東京博善】特別区区民葬儀の取扱い終了と火葬料金の改訂について」(2026年4月1日火葬分より普通炉87,000円)https://www.kosaido.co.jp/press/16246/
- 消費者庁「消費者ホットライン」188https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- 数字は上記の公表資料の記載をそのまま引いた。太字は筆者による強調。
- 本記事は特定の葬儀社・斎場を推奨するものではない。 事業者名を挙げているのは、公表料金の出どころを示すためだけになる。困っている場合は消費者ホットライン188(局番なし・相談無料、通話料は相談窓口につながった時点から自己負担)。
※ 葬儀の見積を「火葬料が含まれているか」「単価と数量が分かれているか」「人数が変わったときの精算方法が書かれているか」の観点で整理するものを個人で作っています。金額の高い・安いは判定しません → 葬儀見積チェッカー
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