記事2026-08-23
美容クリニックの資料に「主なリスク・副作用」は書かれていますか — 医療広告ガイドラインが自由診療に求める5つの記載(2026年8月時点)
美容医療の施術料金には公的な相場がありませんが、資料に何が書かれているべきかは国が定めています。厚生労働省の医療広告ガイドラインが自由診療の広告に求める5つの記載と、禁止されている体験談・ビフォーアフター写真の扱いを、指針と条文の記載だけで整理しました。
この記事は 美容医療セカンドチェック(提案された施術と見積を、契約前に整理)を作る過程で、 一次資料を読んだ記録です。事業者への送客はしていません。
カウンセリングで説明を受けて、見積書と資料を渡された。金額が妥当かどうかは判断できない。美容医療は自由診療で、公的な料金統計も業界共通の相場表も存在しないので、私も高い・安いは書かない。
ただ、金額の妥当性とは別に、確認できることがある。厚生労働省の指針は、美容クリニックの広告に何を書いてはいけないか、そして自由診療について何を書かなければならないかを、具体的に定めている。手元の資料をその一覧に当てると、「書いてあるはずのものが無い」が見つかることがある。
指針の正式名称は「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」。平成30年5月8日 医政発0508第1号の厚生労働省医政局長通知で策定され、令和8年3月30日に最終改正されている。以下、単に「指針」と書く。
1. まず、どこからが「広告」なのか
指針は、次の3つをいずれも満たすものを医療広告としている。
① 患者の受診等を誘引する意図があること(誘引性) ② 医業若しくは歯科医業を提供する者の氏名若しくは名称又は病院、診療所若しくはオンライン診療受診施設の名称が特定可能であること(特定性) ③ 医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する内容であること
広告に該当する媒体の具体例には、こういうものが並んでいる。
ア チラシ、パンフレットその他これらに類似する物によるもの(ダイレクトメール、ファクシミリ等によるものを含む。) エ 情報処理の用に供する機器によるもの(Eメール、インターネット上の広告等) オ 不特定多数の者への説明会、相談会、キャッチセールス等において使用するスライド、ビデオ又は口頭で行われる演述によるもの
一方で、広告に該当しないものもはっきり書かれている。ここは読み違えやすい。
(4)医療機関等の施設内の掲示、施設内で配布するパンフレット等 医療機関やオンライン診療受診施設の内部の掲示、内部で配布するパンフレット等はその情報の受け手が、通常、既に受診している患者等に限定されるため、(中略)「患者の受診等を誘引する意図があること」(誘引性)を満たすものではなく、情報提供や広報と解される。
つまり、院内で1対1のカウンセリングのときに手渡された紙そのものは、指針上は「広告」ではなく情報提供に整理される。ここを「あの資料は広告規制違反だ」と言い切ると外れる。
それでも確認する意味がある理由は2つある。
- そのクリニックを知ったきっかけ側(ウェブサイト・SNS・チラシ・ダイレクトメール)は広告にあたる。 そして自由診療をウェブサイトで紹介する場合に何を書くべきかは、後述のとおり具体的に決まっている
- 不特定多数向けの説明会・相談会で使われたスライドや口頭説明は、上の「オ」で広告にあたる
そして、ウェブサイトに求められている記載の一覧は、そのまま「自分が受け取った説明に、何が含まれているべきだったか」の物差しとして使える。ウェブに書くよう求められている項目が、対面の説明では省かれている、という形で差が出るからです。
2. 禁止されている広告は、虚偽+5類型
指針は、禁止される広告の基本的な考え方をこう整理している。
法第6条の5第1項の規定により、内容が虚偽にわたる広告は、(中略)罰則付きで禁じられている。 同様の観点から、法第6条の5第2項の規定及び医療法施行規則(中略)第1条の9により、次の広告は禁止されている。 (ⅰ) 比較優良広告 (ⅱ) 誇大広告 (ⅲ) 公序良俗に反する内容の広告 (ⅳ) 患者その他の者の主観又は伝聞に基づく、治療等の内容又は効果に関する体験談の広告 (ⅴ) 治療等の内容又は効果について、患者等を誤認させるおそれがある治療等の前又は後の写真等の広告
条文に当てると、こう並ぶ。
| 類型 | 根拠 |
|---|---|
| 虚偽広告 | 医療法第6条の5第1項(罰則付き) |
| 比較優良広告 | 同第2項第1号 |
| 誇大広告 | 同第2項第2号 |
| 公序良俗に反する広告 | 同第2項第3号 |
| 患者等の主観・伝聞に基づく体験談 | 同第2項第4号 → 医療法施行規則第1条の9第1号 |
| 誤認させるおそれがある治療等の前後の写真等 | 同第2項第4号 → 医療法施行規則第1条の9第2号 |
「日本一」「No.1」がだめなのは、このうちの比較優良広告になる。
例えば、「日本一」、「№1」、「最高」等の最上級の表現その他優秀性について著しく誤認を与える表現は、客観的な事実であったとしても、禁止される表現に該当する。
「著名人も当院で治療を受けております。」といった、著名人との関連性を強調するものも比較優良広告として扱われる、と具体例に挙がっている。
3. 体験談は「内容が正しくても」認められない
ここは条件付きではない。
これは、患者等の体験談の記述内容が、広告が可能な範囲であっても、広告は認められない。
理由も書かれている。「個々の患者の状態等により当然にその感想は異なるものであり、誤認を与えるおそれがある」から。
ただし、個人が自分の意思で書いたものは別という線も引かれている。
なお、個人が運営するウェブサイト、SNS の個人のページ及び第三者が運営するいわゆる口コミサイト等への体験談の掲載については、医療機関が広告料等の費用負担等の便宜を図って掲載を依頼しているなどによる誘引性が認められない場合は、広告に該当しない。
4. ビフォーアフター写真は、写真そのものが禁止されているのではない
ここも読み違えやすい。禁止されているのは「誤認させるおそれがある」写真で、指針は続けてこう書いている。
また、術前又は術後の写真に通常必要とされる治療内容、費用等に関する事項や、治療等の主なリスク、副作用等に関する事項等の詳細な説明を付した場合についてはこれに当たらない。 さらに、当該情報の掲載場所については、患者等にとって分かりやすいよう十分に配慮し、例えば、リンクを張った先のページへ掲載したり、利点や長所に関する情報と比べて極端に小さな文字で掲載したりといった形式を採用してはならない。
つまり「写真+詳細な説明」がセットで初めて認められる、という建て付けになる。禁止されるのはこういう形。
- 写真だけで説明が一切ないもの
- 説明が不十分なもの(治療内容と費用の一部だけがあり、期間・回数・リスク・副作用が無い)
- クリックしないと説明が表示されないもの
- 複数の症例写真に、説明をまとめて1つだけ付けているもの(事例解説書(第6版)は、それぞれの写真に付す必要があるとしている)
- バナー画像や医療機関の公式SNSに、説明の無い写真を載せているもの(同・事例解説書)
なお、加工・修正して効果があるように見せた術前術後の写真は、誇大ではなく虚偽広告として扱われる(=罰則付きの側)。撮影条件や被写体の状態を変えて撮ったものは誇大広告、という区別も指針に書かれている。
5. 「今だけ」は、禁止類型ではなく「厳に慎むべき」に置かれている
ここは正確に分けておきたい。費用を強調した広告は、上の5類型のどれにも入っておらず、指針の「(8)その他 ア 品位を損ねる内容の広告」に置かれている。
医療機関や医療の内容について品位を損ねる、あるいはそのおそれがある広告は行うべきではない。 ① 費用を強調した広告 ・ 今なら○円でキャンペーン実施中! ・ 「ただいまキャンペーンを実施中」 ・ 「期間限定で○○療法を50%オフで提供しています」 ・ 「○○100,000 円50,000 円」 ・ 「○○治療し放題プラン」
「無料相談をされた方全員に○○をプレゼント」も、提供される医療の内容と直接関係のない事項による誘引として、同じ枠にある。
「禁止」と書かれた類型と「行うべきではない」と書かれたものは別なので、そこは混ぜない。ただし、金額の見せ方が誇大広告になる場合は別途ある。指針は誇大広告の具体例として、大きく表示された値段が複数箇所を同時に実施したときの費用で、1箇所だと倍近くかかることが小さな注釈でしか書かれていない、という美容外科の例を挙げている。
6. ここが本丸 — 自由診療は「限定解除」の要件を満たして初めて広告できる
医療法第6条の5第3項は、広告できる事項を16号まで列挙し、それ以外は広告してはならないとしている。自由診療の治療内容は、原則としてこの中に入らない。
例外が「広告可能事項の限定解除」で、根拠は医療法施行規則第1条の9の2。指針の書き方はこう。
広告可能事項の限定解除が認められる場合は、以下の①~④までのいずれも満たした場合とする。ただし、③及び④については自由診療について情報を提供する場合に限る。 ① 医療に関する適切な選択に資する情報であって患者等が自ら求めて入手する情報を表示するウェブサイトその他これに準じる広告であること ② 表示される情報の内容について、患者等が容易に照会ができるよう、問い合わせ先を記載することその他の方法により明示すること ③ 自由診療に係る通常必要とされる治療等の内容、費用等に関する事項について情報を提供すること ④ 自由診療に係る治療等に係る主なリスク、副作用等に関する事項について情報を提供すること
②の「問い合わせ先」は、電話番号やEメールアドレスを指すと明記されている。
そして③が求めている中身が、いちばん具体的です。
治療等の名称や最低限の治療内容・費用だけを紹介することにより患者等を誤認させ不当に誘引すべきではなく、通常必要とされる治療内容、標準的な費用、治療期間及び回数を掲載し、患者等に対して適切かつ十分な情報を分かりやすく提供すること。標準的な費用が明確でない場合には、通常必要とされる治療の最低金額から最高金額(発生頻度の高い追加費用を含む。)までの範囲を示すなどして可能な限り分かりやすく示すこと。
④についても同じ構えで、「利点や長所のみが強調され、その主なリスク等についての情報が乏しい場合」を問題にしている。掲載場所の縛り(リンク先に飛ばさない/極端に小さな文字にしない)は③④の両方に付いている。
まとめると、自由診療について広告する側が出すべき項目は5つになる。
| 出すべき項目 | 事例解説書が「足りない」としている例 |
|---|---|
| 通常必要とされる治療内容 | 「〇〇治療は、世界的に流行しています。美肌効果、疲労回復が期待できます。」だけ |
| 標準的な費用 | 「料金は患者様の状態により異なります」だけ/「150,000円〜」と最低金額だけ/別料金の存在が小さな文字で、金額の明示が無い |
| 治療期間 | 「治療期間は患者様の状態により異なります」だけ/「1か月〜」と下限だけ |
| 治療回数 | 治療期間はあるが回数が無い |
| 主なリスク・副作用 | 下記のとおり |
リスクの欄に、リスクではないものが入っていることがある
事例解説書は、リスク・副作用の欄について「これはリスクの説明になっていない」という例を3つ挙げている。ここが実務では効きます。
- 「ダウンタイムはありません。施術当日からメイク可能です。」 → 主なリスク・副作用ではなく、メリットの説明である
- 「この施術をお受けできない方」(体調不良の方、妊娠中の方 など) → 術中・術後のリスクの説明ではなく、対象外となる患者についての説明である
- 「施術当日は、激しい運動・飲酒等はお控えください」 → 治療を受けるにあたっての注意事項であって、治療を受けたことにより起こりうるリスク・副作用の説明ではない
求められているのは「治療を受けたことにより起こりうるリスク、副作用(治療を受けたことによる副次的もしくは望ましくない作用等)の説明」だと書かれている。禁忌・注意事項の欄はあるのに、副作用の欄が無いという資料は、この線で確認できる。
7. 未承認の医薬品・医療機器を使う場合は、さらに5つ
医薬品医療機器等法上、承認等されていない医薬品・医療機器・再生医療等製品(あるいは承認された効能・効果や用法・用量と異なる使い方)を自由診療で使う場合、限定解除の要件として次も十分に記載する必要がある、とされている。
(ⅰ)未承認医薬品等であることの明示 (ⅱ)入手経路等の明示(医師等の個人輸入による場合はその旨。あわせて厚生労働省の「個人輸入において注意すべき医薬品等について」を情報提供) (ⅲ)国内の承認医薬品等の有無の明示(承認条件が課されている場合はその旨も) (ⅳ)諸外国における安全性等に係る情報の明示 (ⅴ)未承認医薬品等は医薬品副作用被害救済制度・生物由来製品感染等被害救済制度の救済の対象にはならないことの明示
(ⅴ)は、承認を受けた製品であっても「原則として決められた効能・効果、用法・用量及び使用上の注意に従って使用されていない場合は救済対象にならない」ところまで書くよう求めている。
なお、承認された医薬品・医療機器を承認の範囲で使う自由診療についても、事例解説書は公的医療保険が適用されない旨と標準的な費用の記載が無ければ広告できないとしている。
手元の資料を見るときの5点
- 「主なリスク・副作用」の欄があるか。 「お受けできない方」「注意事項」「ダウンタイムなし」しか無い場合、それはリスクの説明として扱われていない。
- 費用が「〜円から」で終わっていないか。 標準的な費用が明確でないなら、最低金額から最高金額まで、発生頻度の高い追加費用を含めて示すのが指針の求めている形になる。
- 治療期間と回数の両方があるか。 期間だけ・回数だけは、事例解説書が不十分としている形です。
- 問い合わせ先(電話番号・メールアドレス)が明示されているか。 限定解除の②はこれを求めている。
- 説明が、写真や利点と同じ画面・同じ大きさで書かれているか。 リンク先に置く、極端に小さな文字で書くという形は、指針が名指しで否定している。
聞き方としては、「この施術は必要ですか」よりも、「この施術の主なリスクと副作用、標準的な費用の幅、通常の治療期間と回数を、書いたものでいただけますか」のほうが、指針の建て付けには沿っている。ウェブサイトに書くことが求められている項目を、そのまま紙でもらう、という形になる。
そのうえで、施術が必要かどうか・効果があるかどうかは医師に聞いてください。 この記事は、資料に何が書かれているかまでしか扱っていません。
広告として問題があると思ったときの窓口は、厚生労働省の医療機関ネットパトロール 通報フォームと、各自治体の医療広告相談窓口になる。契約や金銭のトラブルは、消費者ホットライン188(局番なし・相談無料、通話料は相談窓口につながった時点から自己負担)。
出典(すべて 2026-08-23 に本文を取得して確認)
- 厚生労働省「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告等ガイドライン)」令和8年3月30日最終改正https://www.mhlw.go.jp/content/001683594.pdf
- 厚生労働省「医療広告等ガイドラインに関するQ&A」https://www.mhlw.go.jp/content/001683595.pdf
- 厚生労働省「医療広告規制におけるウェブサイト等の事例解説書(第6版)」令和8年3月作成https://www.mhlw.go.jp/content/001683116.pdf
- 厚生労働省医政局長通知「医業若しくは歯科医業又は病院若しくは診療所に関する広告等に関する指針(医療広告ガイドライン)等について」平成30年5月8日 医政発0508第1号(指針の策定通知)https://www.mhlw.go.jp/file/06-Seisakujouhou-10800000-Iseikyoku/0000206548.pdf
- 厚生労働省「医療法における病院等の広告規制について」(上記の掲載元)https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kenkou_iryou/iryou/kokokukisei/index.html
- e-Gov法令検索「医療法」(昭和23年法律第205号)第6条の5https://laws.e-gov.go.jp/law/323AC0000000205
- e-Gov法令検索「医療法施行規則」(昭和23年厚生省令第50号)第1条の9・第1条の9の2https://laws.e-gov.go.jp/law/323M40000100050
- 厚生労働省 医療機関ネットパトロール 通報フォームhttps://iryoukoukoku-patrol.mhlw.go.jp
- 厚生労働省「医療広告相談窓口一覧」https://www.mhlw.go.jp/content/001511513.pdf
- 消費者庁「消費者ホットライン」https://www.caa.go.jp/policies/policy/local_cooperation/local_consumer_administration/hotline/
- 引用は上記の本文からそのまま引いた。太字は筆者による強調。
- 本記事は医学的な判断をするものではない。 施術の要否・効果・安全性は医師に確認してください。また、広告として問題がある記載があったことが、その施術や契約について何を意味するかは、この記事では扱っていない。
※ 美容医療の見積書・契約書を「料金に何が含まれているか」「法令上求められる記載があるか」で整理するものを個人で作っています → 美容医療セカンドチェック
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